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夏の王様 1

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僕はサム

毎年、夏になると思い出す

母親の故郷で2週間過ごした
10歳の夏休み
小さな田舎町での出来事。

そこは、僕の住んでいる街から電車と車で4時間
深い森と海に挟まれた古い漁師町。

一人暮らしのおばあちゃんの家は
木が生い茂る森の中、坂の中腹
舗装もされていない土の道路沿いにあった。

道を挟んだ向かいには青い屋根の大きなお屋敷があって
それ以外の民家は森に遮られていて見えない。

小さな古い漁師町は男尊女卑の戒律が厳しくて

ほんの10歳の僕でも
この町では男の人が大層偉くて
女の人は無口な召使いだってことがすぐに理解できた。

そのせいか、子供も外で遊ぶのは男の子だけで
女の子が外で元気に遊んでいるのを見かけることはなかった。

(ただ二人を除いて)

町に来て2日目
母親とおばあちゃんと家の中で過ごすのも少し飽きた頃
窓から小道を走り回る同い歳くらいの男の子達が見えたので
思い切って家の外に出てみることにした。

6人いた子供の中に、スカートを履いた女の子を二人見つけ驚いていると

背が高い方の女の子が僕に気づいて駆け寄って来てくれた。

『ハイ!私ジュリア!9歳!
こっちは妹のアリス!4歳よ!』

「ぁ、僕はサム。」

『知ってる!ママが向かいの家の子だって言ってた!』

そう言うと『おいでよ!』とジュリアは僕の手を引っ張って
追いかけっこの仲間に入れてくれた
妹のアリスはテディベアを抱えて必死に後をついて来る。

同い年くらいの男の子達に負けないくらい勝気なジュリアは
僕より10㎝ばかり背が低いのに誰よりも足が速かった。

日が暮れるのも忘れ、汗だくになりながら遊んでいると

「お嬢様ーー!!お夕飯ですよー!」

と、青い屋根の方角から声が聞こえ

『サム!また明日ね!』

そう言ってジュリアとアリスは帰って行った。

僕は明日もジュリアと遊べることが嬉しくて
その夜は早く寝ることにした。

翌朝、朝食のトマトオムレツを食べていると

「サム。お母さん今日はお昼から夕方までおばあさんを病院に連れて行くから、良い子で留守番していてね。」

そう告げられ、昼から一人で留守番をすることになった。

勝手に外へ出掛けられなくなった家で独り
ぼーっ、と窓から青い屋根の玄関を眺めていると
ジュリアとアリスが飛び出してきた。

僕を見つけたようで、こちらに手を振って走って来る

ガチャンッと大きな窓を開け、手を振り返す

『サム!遊ぼう!』

「ぁ、、遊びたいけど留守番なんだ」

『うん?だから?』

「だから?だから、家から出られないんだよ、、」

『え?なんで?』

「なんで?って、、」

『誰か帰って来る前に家に戻ればいいじゃない?』

「えぇー!だって、そんなの怒られるよ、、」

『大丈夫!家が見えるところで遊ぼ!!』

『ほら!早く!』

「で、でもぉ、、」

『サムって男の子なのに怖がりね!』

「そういうわけじゃないけど、、」

『なら来なさいよ!?』

「でもぉ、、」

『私サムと遊びたい!ねぇ!早く!!』

「わ、わかったよぉ、、」

母親に怒られるのは怖かったが
ジュリアの強引さに負けて外で遊ぶことにした

ジュリアは瞳と同じ
コバルトブルーの膝丈スカートを履いていて
そのスカートから長く伸びる脚を僕は見つめたまま
アリスと一緒に彼女の後ろをついて歩いて行く

ジュリアは今日も、とても美しかった、、

つづく

INTENSE ANNA

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